サクリファイス【評価:72点】

サクリファイス

あらすじ・概要

当作品は1986年の第39回カンヌ国際映画祭において絶賛され、審査員特別グランプリを初めとする4賞を独占して受賞した。しかしタルコフスキーはこの映画の完成後、病床に伏し、同年暮に故国にも戻れぬままパリで亡くなり、遺作となった。
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舞台はスウェーデンのゴトランド島。舞台俳優の名声を捨てたアレクサンデルは、妻アデライデと娘マルタ、息子の少年(喉の手術をしたため、映画の最後まで口をきけない設定)と暮らしている。家には小間使いのジュリア、召使いのマリアもいる。アデライデは夫への不満を抱き、夫婦は不仲である。今日はアレクサンデルの誕生日。彼は“子供”と一緒に枯れた松の木を植え、枯れた木に3年間水をやり続けて甦らせた僧の伝説を話す。

その日、郵便局員オットーや医師ヴィクトルといった友達も交えて誕生会を開くことになっていた。オットーが持ってきたプレゼントの古い地図が高価だからと辞退するアレクサンデルに、犠牲がなければプレゼントではないとオットーが言う。

タイトル サクリファイス
製作 1986年
原題 Offret/Sacrifice

製作国 イギリス/スウェーデン/フランス
上映時間 149分
ジャンル ドラマ
監督 アンドレイ・タルコフスキー
脚本 アンドレイ・タルコフスキー
出演者 エルランド・ヨセフソン
受賞 カンヌ国際映画祭1986年39回:グランプリ(審査員特別グランプリ・審査員特別賞)
英国アカデミー賞1987年41回:外国語映画賞

評価

72点

レビュー

未来の子供たちへタルコフスキーの遺言

僕はこの作品を観た時
美術館に足を運び一つ一つの絵画をじっくり時間をかけて鑑賞するあの感覚を思い起こした。
音、映像、セリフ全てがアートの様でその箱の中にギッュと押し込まれている。
そして僕は湧き出るそのロゴスを記憶として残したい衝動に駆られる。

これは核戦争が起きた無神論者であるアレクサンデルのサクリファイス(犠牲)の1日を描く物語。
ニーチェの永劫回帰の語りの通り永続的に繰り返される破壊と再生の物語。
この世の摂理をタルコフスキーの死と重ねあわせその意思を子に託す彼からの寓話なのだ。

そのメタファーの塊は世界と愛するものを守るための大きな犠牲と連鎖する負の遺産を私達に忌憚なく植え付ける。

人間として生きる限りその業からは逃れることができない。
だが彼らは信じることを止めない。その継続が世界を変えることを知っているから。

大人が作り出す破壊という環境を言葉を発しないその未来の子供はどう見るのか?

湿地と重なる冷たい炎が激しく燃えあがり大地と空気に交じり合う。
そしてその犠牲のもと全てが浄化される。

世界は一巡し、そしてまた神の言葉(ロゴス)からはじまる。
その生命の樹は親の犠牲から子に受け継がれまた子の親となる。

タルコフスキーは語る。
「自分の人生は失敗だったと思わないか?以前はそう思ったが、子供が生まれてからはそう思わなくなった」

種は方舟より未来に託される。私達がみる未来はまた犠牲を伴う未来なのか?
それとも…

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