ブリキの太鼓【評価:75点】

ブリキの太鼓

あらすじ・概要

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1954年、精神病院の住人である30歳のオスカル・マツェラートが看護人相手に自らの半生を語るという形で物語は進行していく。体は幼児で、精神年齢は成人のオスカルは、冷めた視点で世の中を見つめ、その悪魔的所業で、自分を愛してくれている周囲の人間を次々に死に追いやる良心を持たない人間として描写されているが、最終的に自分を保護してくれる人間がいなくなったことに気が付き愕然とすることになる。
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タイトル ブリキの太鼓
製作 1979年
原題 DIE BLECHTROMMEL
製作国 西ドイツ/フランス/ドイツ
上映時間 142分
ジャンル ドラマ
監督 フォルカー・シュレンドルフ
脚本 ジャン=クロード・カリエール
フォルカー・シュレンドルフ
フランツ・ザイツ
ギュンター・グラス
原作 ギュンター・グラス
出演者 ダーフィト・ベンネント
受賞 アカデミー賞1980年52回:国際長編映画賞(外国語映画賞)
日本アカデミー賞1982年5回:最優秀外国作品賞
カンヌ国際映画祭1979年32回:パルム・ドール
ロサンゼルス映画批評家協会賞1980年6回:外国語映画賞
ブルーリボン賞1982年24回:外国映画賞

評価

75点

レビュー

時計じかけのオレンジにも似た衝撃

少し前にオクラホマ州で児童ポルノ扱いされてレンタルビデオが回収された経歴をもつほどのカルト作品。
3歳の性行為は確かに衝撃なのかもしれない。

原作のノーベル賞作家ギュンター・グラスは今年の4月に88歳で亡くなった。

「そのとき、太陽は乙女座に、支配宮の十室には海王星があった。僕は奇跡と幻滅の中間で生まれた」

初っ端からドキリとさせられる台詞で屈折した魂を背負ったオスカルは産まれる。

ナチスドイツが台頭する第二次世界大戦前後の時代背景にヨーロッパが持つどす黒い重い雰囲気が覆う中、冷酷な意思をもったその子供は大人のインモラルな部分に触れたくないがゆえに自ら3歳の身体で成長を止めることになる。

奇声でガラスを割る特殊能力をもった少年オスカルは不道徳を貫き調和から背を向ける大人たちを「大人でも子供でもない視点」
で太鼓を叩きながらラディカルに突き進む。

精神と肉体が乖離したその蠢くものは人の不快感を刺激し続け
耳の穴にグイグイと無理やり侵入してくる一度聞いたら忘れられないそのBGMは聴くものの平衡感覚を尽く歪めていく。

そしてオスカルの悪魔的な意志はその時代に生きる「こわれやすい美」を次々と不協和音で人生もろとも粉々にしていく。

奇声と生魚と唾液と牛の頭部とウナギがドロドロに交じり合い、ポーランドという成長しない国を侵食していく。

メタファーにまみれた含意たっぷりのこの寓話はあなたの心を鷲掴みにするだろう。
だからあなたはこれを観るとき体力の消耗を想定して全身全霊で体感すべきだ。
カルトと言っても間違いではないキューブリックの「時計じかけのオレンジ」にも似たこの衝撃は誰にも止められない。

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