羊たちの沈黙【評価:72点】

羊たちの沈黙

あらすじ・概要

第64回アカデミー賞で主要5部門を受賞。アカデミー賞の主要5部門すべてを独占したのは『或る夜の出来事』、『カッコーの巣の上で』に次いで3作目である。
連続殺人事件を追う女性FBI訓練生と、彼女にアドバイスを与える猟奇殺人犯で元精神科医との奇妙な交流を描く。

物語の主役である精神科医のレクター博士はアンソニー・ホプキンスが演じ、アカデミー主演男優賞を受賞した。続編である『ハンニバル』でもホプキンスがレクターを演じている。

もう一方の主役のFBI訓練生、クラリス・スターリングを演じたジョディ・フォスターもアカデミー主演女優賞を受賞している。
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カンザスシティ (ミズーリ州)ほかアメリカ各地で、若い女性が殺害され皮膚を剥がれるという連続猟奇殺人事件が発生。逃走中の犯人は“バッファロー・ビル”と呼ばれていた。

FBIアカデミーの実習生クラリス・スターリング(ジョディ・フォスター)は、バージニアでの訓練中、行動科学課 (BSU)のクロフォード主任捜査官からある任務を課される。クロフォードは、バッファロー・ビル事件解明のために、監禁中の凶悪殺人犯の心理分析を行っていたが、元精神科医の囚人ハンニバル・レクター(アンソニー・ホプキンズ)は、FBIへの協力を拒絶していた。クラリスは、クロフォードに代わって事件に関する助言を求めるため、レクターの収監されているボルティモア州立精神病院に向かう。

レクターは、当初は協力を拒んでいたものの、やがてクラリスに彼女自身の過去を語らせることと引き換えに助言することを約束する。そして、クラリスは、父親の死を受けて伯父に預けられた過去を話し、そこで明け方に伯父が羊たちを屠殺するのを目撃したことがトラウマとなっていることを明かす。
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タイトル 羊たちの沈黙
製作 1990年
原題 The Silence of the Lambs
製作国 アメリカ
上映時間 118分
ジャンル サスペンス
監督 ジョナサン・デミ
脚本 テッド・タリー
原作 トマス・ハリス
『羊たちの沈黙』
出演者 ジョディ・フォスター
アンソニー・ホプキンス
スコット・グレン
テッド・レヴィン
受賞 アカデミー賞1992年64回:作品賞/監督賞/主演男優賞/主演女優賞/脚色賞
ゴールデングローブ賞1991年49回:主演女優賞(ドラマ部門)
ベルリン国際映画祭1991年41回:銀熊賞/最優秀監督賞
ブルーリボン賞1992年34回:外国映画賞
ニューヨーク映画批評家協会賞1991年57回:作品賞

評価

72点

レビュー

深淵なる底の見えないプラトニックラブ

こんな哲学的で深淵に臨むような恋愛物語を見たことがないです。
この作品はサイコパスや心理捜査官を一般認知に押し上げた映画と言っても過言はないでしょう。
これは主に3人のシリアルキラーがモデルになっています。
墓から死体を掘り起こし人間の生皮や頭蓋骨を剥ぎとり戦利品としてしていたエド・ゲイン。おびただしい若い女性を殺害したハンサムな殺人鬼テッド・バンディ。6人の女性を監禁・暴行その残虐な手口は史上みないゲイリー・ハイドニック。

猟奇殺人に行き詰まったFBIは元精神科医の殺人鬼ハンニバル・レクターに示唆を受けようとする。
レクターと初対面時クラリスは注意を受ける。
「十分気をつけてくれ。個人的なことは一切話すな。あいつの頭はまともじゃない。その点だけ忘れるな。あいつは怪物だ」
この台詞だけでこれから対面するモンスターの不気味さが滲み出る。

レクター演じるアンソニー・ホプキンスは監獄という限られた空間であの狂気を出すために連続殺人犯のファイルを読み込み刑務所の殺人犯を訪問し研究し演技に臨む。ガラス越しだがクラリスとの対面はその場をピリピリと緊張感で充満させます。
この対面でアンソニー・ホプキンスは即興で彼女の南部なまりを嘲笑う。彼女は本気でショックを受け動揺しそのリアルな表情を生み出すことに成功している。彼の中にサイコパスが乗り移った怪演といえる場面だ。

ガラス越しや鉄格子を隔て触れることはできないその監獄で言葉を巧みに利用し脳髄を刺激する。過去に封印したトラウマをむき出しにするこの双方の情報心理戦は間近で吐息を感じるほどだ。その愛の掛け合いとも言える沼にはまれば二度と抜け出せない。クラリスもまた彼の深淵なる魅力に引きずり込まれる様は見物です。

「怪物と戦うものはその過程で自分自身も怪物になることがないよう、気をつけねばならない。深淵をのぞきこむとき、その深淵もこちらを見つめているのだ。」(ニーチェ)

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