セッション【評価:90点】

セッション

あらすじ・概要

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19歳のアンドリュー・ニーマンは、バディ・リッチのような「偉大な」ジャズドラマーになることに憧れ、アメリカ最高峰の音楽学校、シェイファー音楽院へ通っていた。アンドリューを男手ひとつで育てている父ジムも、良き理解者としてアンドリューを支えてくれている。ある日アンドリューが教室で1人ドラムを叩いていると、学院最高の指導者と名高いテレンス・フレッチャーと出会う。後日、アンドリューが学ぶ初等クラスをフレッチャーが訪れ、自身が指揮するシェイファー最上位クラスであるスタジオ・バンドチームにアンドリューを引き抜くのだった。迎えた練習初日、フレッチャーは開始早々バンドメンバーに罵詈雑言を浴びせはじめ、1人を退場させる。フレッチャーは一流のミュージシャンを輩出するのに取り憑かれ、要求するレベルの演奏ができない生徒に対し、人格否定や侮辱を含めた罵声や怒号も厭わない狂気の鬼指導者だったのだ。その矛先はさっそくアンドリューにも向けられ、ほんのわずかにテンポがずれているという理由で椅子を投げつけられてしまう。さらに他のメンバーの目の前で頬を引っ叩かれ、屈辱的な言葉を浴びせられると、アンドリューは泣きながらうつむくほかになかった。しかしアンドリューはこの悔しさをバネに、文字通り血のにじむような猛特訓を開始するのであった。
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デイミアン・チャゼルは高校時代に、競争の激しいジャズバンドに所属し、本当に怖い思いをしたという。テレンス・フレッチャーというキャラクターにはその経験が反映されている。その上でバディ・リッチのようなバンドリーダーを参考に練り上げたキャラクターだとチャゼルは語っている。

チャゼルの書いた85頁の脚本が2012年のブラックリスト(映画化されていない素晴らしい脚本を載せたリスト)に載ったことで、一気に注目が集まった。ライト・オブ・ウェイ・フィルムズとブラムハウス・プロダクションズがチャゼルの脚本を映画化するためにタッグを組んだ。映画製作のための資金を十分に確保するために、チャゼルは脚本の15ページ分を短編映画化した。そのさい、ドラマーをジョニー・シモンズ、教師をJ・K・シモンズが演じた。出来上がった18分の短編映画は第29回サンダンス映画祭に出品され、絶賛された。そのため、投資家たちから多くの資金を獲得することができた。長編映画製作に当たってボールド・フィルムズから330万ドルの資金提供を受けている。

タイトル セッション
製作 2014年
原題 Whiplash
製作国 アメリカ
上映時間 106分
ジャンル ドラマ
監督 デイミアン・チャゼル

脚本 デイミアン・チャゼル
原作 シャーウッド・キング
出演者 マイルズ・テラー
J・K・シモンズ
受賞 アカデミー賞2015年87回:助演男優賞/音響賞(録音賞)/編集賞
ゴールデングローブ賞2014年72回:助演男優賞
サンダンス映画祭2014年30回:グランプリ/観客賞

評価

90点

レビュー

2つの復讐の物語

なるほどこれはエゴとエゴのぶつかり合いだ。
傲慢、嫉妬、憤怒、強欲を全てノイズと合わせぶつけあっている。
傷口に砂と塩をジャリジャリとこすりあわせる行為だ。
そこに他の賞賛が入り込む余地はない。
無我夢中に貪り合う生殖行動にも似たものを鼓膜や視覚を通して訴えかけてくる。穴という穴から射精を繰り返し、飛び散るその液体(血、汗、涙)から我々は命の削り合いを見出す。

一歩間違えれば真っ逆さまに地獄に落ちて死んでしまう可能性を秘めながらピンと張った細い糸の上でザクザクとナイフでお互いの身体を刺し合う物語。

さてこの監督は高校生のころジャズドラマーを目指してひどいシゴキで挫折したそうだ。それは彼にとって大きなトラウマとなったのだろう。それがこの作品にも生きている。

これは一見ジャズ賛歌のように見える映画だがジャズへの復讐いわゆるアンチジャズを体現しているようにも思える。

彼が音楽ではなく映画監督で成功したことによる復讐。ラスト9分の復讐。これはこの2つの復讐の物語。

怖いのは復讐はたぶんまだ続くであろうこと。昇華されることなく彼はまた違う作品で復讐を繰り返すのだろう。
天才ゆえの宿命なのだろうか?

最後に言っておきます。

僕は褒められて伸びるタイプです。
だからみなさん褒めてくれていいんですよ(*´∀`*)

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