あらすじ・概要
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ある日、なにげなく鑑賞した映画の中に自分と瓜二つの俳優を見つけた大学の歴史講師アダムは興味を持ち、その俳優アンソニーの居場所を突き止める。その後、2人は顔、声、生年月日などすべてが一致することを知ったうえ、やがてアダムの恋人メアリー、アンソニーの妻ヘレンを巻き込み、想像を絶する運命をたどる。
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タイトル | 複製された男 |
製作 | 2013年 |
原題 | Enemy |
製作国 | カナダ/スペイン |
上映時間 | 90分 |
ジャンル | ミステリー |
監督 | ドゥニ・ヴィルヌーヴ |
脚本 | ハビエル・グヨン |
原作 |
『複製された男』 ジョゼ・サラマーゴ |
出演者 | ジェイク・ギレンホール メラニー・ロラン サラ・ガドン イザベラ・ロッセリーニ |
評価
レビュー
カオスとは未解読の秩序である
「脳力」が試される。究極の心理ミステリー あなたは一度で見抜けるかという触れ込みのこの映画。
まずはアメリカ版のポスターの画像をみてください。
2人の男が並ぶ日本のポスターと比較してわかると思うんですけど
正直日本のポスターデザインはフェアじゃないと感じてます。
それは本場のデザインには大きなヒントが隠されているからです。
次にタイトル
ポーランドの原作小説自体「O Homem Duplicado(重複した男)」みたいなタイトルなのでこれはこれでいいかなと。
ちなみにアメリカの小説タイトルは「The Double」
どちらかというと「Enemy(敵)」とした監督の優しさを感じました。
次にこの作品内のキーワードとなる「蜘蛛」
ルイーズ・ブルジョワの「ママン」って彫刻がモチーフの蜘蛛として出てきます。六本木ヒルズで見た人も多いはず。
物語とは直接関係ないですがメタファーとしてヒントになるので説明しておきます。
ルイーズは特異な環境で育っています。父と愛人と母と同居生活をしていたのです。
その歪んだ生活から抜け出すために彼女は彫刻の世界に逃げこみます。
この彫刻「ママン」というタイトルの通り母の象徴です。
ルイーズにとって嫌いだった蚊(敵)を食べ尽くしてくれて忍耐強く理性的で強靭な神経を持ちすぐに感情が爆発する父から守ってくれる象徴だったんです。
「感情を爆発させる父」「守る母」「男尊女卑」
そしてこの蜘蛛の彫刻は卵を宿しています。子孫繁栄そして命の誕生を意味します。
さてこの物語は映画として賛否両論の反則的なラストを持ってきています。
そしてただでさえ反則的なラストなのに監督は2重に反則的な罠を仕掛けています。
簡単に言ってしまえば解釈を意図的に観る人に投げてしまったこと。
この2重の罠によって「これは良い」という人と「納得できるかボケ」って人に極端にわかれるんだなと思います。
そりゃそうです。
ジェットコースターでじわりじわり頂上まで登ってさぁ今から最高のテンションで落下するぞってところで落下する所は想像に任せますって監督は言ってるわけですから観てる人からしたらお預け食らった気持ちになり不満になる人は不満でしょう。
だから上記の条件を見て納得出来る人は観たほうがいいし納得出来ない人は観ないほうがいい。
ただ監督を擁護するわけではないですがこの作品あくまで「映画」的に反則と言っただけでミステリー小説としては結構この手のラストって目新しくないし反則ではないと思ってます。なぜ映画的に一般的でないかというと映画は映像ありきとなり小説は文字ありきとなるので文字のみのトリックとしてこの手のオチって映像とくらべて考えやすいんですね。
映画では映像がある以上、通常であれば脳がそれは現実であると認識してしまいやすいのです。
正直この映画は2度3度見ないとわからないと謳われてますがあるキーワードに着目しないとわからない人は一生わからないと思います。しかしそのキモがわかってしまえばすごくシンプルで非常にわかりやすい作りなんじゃないかなと思ってます。
冒頭に「カオスとは未解読の秩序である」とある通りある側面から見るとすごく複雑なことが角度を変えてみるとシンプルすぎるほどシンプルって事がいいたいんだなと解釈しました。あなたは観る角度を変えることが出来るかって監督からの挑戦です。
それを踏まえた上でこの作品に挑戦してみるのも悪くないと思います。
以下自分の解釈含めてネタバレに書きますので映画を観た後に自分の解釈と照らし合わせてみてください。
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