複製された男【評価:71点】

複製された男

あらすじ・概要

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ある日、なにげなく鑑賞した映画の中に自分と瓜二つの俳優を見つけた大学の歴史講師アダムは興味を持ち、その俳優アンソニーの居場所を突き止める。その後、2人は顔、声、生年月日などすべてが一致することを知ったうえ、やがてアダムの恋人メアリー、アンソニーの妻ヘレンを巻き込み、想像を絶する運命をたどる。
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タイトル 複製された男
製作 2013年
原題 Enemy

製作国 カナダ/スペイン
上映時間 90分
ジャンル ミステリー
監督 ドゥニ・ヴィルヌーヴ
脚本 ハビエル・グヨン
原作 『複製された男』
ジョゼ・サラマーゴ
出演者 ジェイク・ギレンホール
メラニー・ロラン
サラ・ガドン
イザベラ・ロッセリーニ

評価

71点

レビュー

カオスとは未解読の秩序である

「脳力」が試される。究極の心理ミステリー あなたは一度で見抜けるかという触れ込みのこの映画。

まずはアメリカ版のポスターの画像をみてください。

複製された男

2人の男が並ぶ日本のポスターと比較してわかると思うんですけど
正直日本のポスターデザインはフェアじゃないと感じてます。
それは本場のデザインには大きなヒントが隠されているからです。

次にタイトル
ポーランドの原作小説自体「O Homem Duplicado(重複した男)」みたいなタイトルなのでこれはこれでいいかなと。
ちなみにアメリカの小説タイトルは「The Double」
どちらかというと「Enemy(敵)」とした監督の優しさを感じました。

次にこの作品内のキーワードとなる「蜘蛛」
ルイーズ・ブルジョワの「ママン」って彫刻がモチーフの蜘蛛として出てきます。六本木ヒルズで見た人も多いはず。

物語とは直接関係ないですがメタファーとしてヒントになるので説明しておきます。
ルイーズは特異な環境で育っています。父と愛人と母と同居生活をしていたのです。
その歪んだ生活から抜け出すために彼女は彫刻の世界に逃げこみます。

この彫刻「ママン」というタイトルの通り母の象徴です。
ルイーズにとって嫌いだった蚊(敵)を食べ尽くしてくれて忍耐強く理性的で強靭な神経を持ちすぐに感情が爆発する父から守ってくれる象徴だったんです。
「感情を爆発させる父」「守る母」「男尊女卑」
そしてこの蜘蛛の彫刻は卵を宿しています。子孫繁栄そして命の誕生を意味します。

さてこの物語は映画として賛否両論の反則的なラストを持ってきています。
そしてただでさえ反則的なラストなのに監督は2重に反則的な罠を仕掛けています。
簡単に言ってしまえば解釈を意図的に観る人に投げてしまったこと。
この2重の罠によって「これは良い」という人と「納得できるかボケ」って人に極端にわかれるんだなと思います。

そりゃそうです。
ジェットコースターでじわりじわり頂上まで登ってさぁ今から最高のテンションで落下するぞってところで落下する所は想像に任せますって監督は言ってるわけですから観てる人からしたらお預け食らった気持ちになり不満になる人は不満でしょう。
だから上記の条件を見て納得出来る人は観たほうがいいし納得出来ない人は観ないほうがいい。

ただ監督を擁護するわけではないですがこの作品あくまで「映画」的に反則と言っただけでミステリー小説としては結構この手のラストって目新しくないし反則ではないと思ってます。なぜ映画的に一般的でないかというと映画は映像ありきとなり小説は文字ありきとなるので文字のみのトリックとしてこの手のオチって映像とくらべて考えやすいんですね。
映画では映像がある以上、通常であれば脳がそれは現実であると認識してしまいやすいのです。

正直この映画は2度3度見ないとわからないと謳われてますがあるキーワードに着目しないとわからない人は一生わからないと思います。しかしそのキモがわかってしまえばすごくシンプルで非常にわかりやすい作りなんじゃないかなと思ってます。

冒頭に「カオスとは未解読の秩序である」とある通りある側面から見るとすごく複雑なことが角度を変えてみるとシンプルすぎるほどシンプルって事がいいたいんだなと解釈しました。あなたは観る角度を変えることが出来るかって監督からの挑戦です。
それを踏まえた上でこの作品に挑戦してみるのも悪くないと思います。

以下自分の解釈含めてネタバレに書きますので映画を観た後に自分の解釈と照らし合わせてみてください。

自分の解釈の流れ:
まず複製された男というところから簡単に考えると宇宙人や謎の組織がクローンを作成するSFを想像しちゃうんですがこれじゃ「脳力」試すことにならんだろうと早々と却下しました。(もちろん宇宙人オチだったらブチ切れてました)

次に候補として上がったのがドッペルゲンガーの存在。このオチを考えた場合、自分以外の第三者がその複製とされる人間を意識しているか?って部分がポイントになってきます。
ただお互いに恋人と妻という存在がそれぞれを認識しているのでその線はないかと考えました。
ただ2人が同じ場所にいる時に第三者がいるという場面がなかったのでそこに引っかかりを感じていました。
その引っ掛かりはアンソニーの妻が大学でアダムと出会いアダムが姿を消した瞬間アンソニーから電話がかかってきた時点で本人が作り出した何かだろうと読むことができました。

ただ皆さんが驚く蜘蛛のラストたしかにあの終わり方されるとなんだよそれって思いますよね。
僕も一瞬なにが起こったかわかりませんでした。

これは公式サイトのネタバレにある通り簡単に言ってしまえば脳内人格の闘い。
アダムが主人格と見せかけて実はアンソニーが主人格。
浮気ぐせが治らない主人公は妊娠してる妻を尻目に浮気願望がむくむくと。
でも生活が安定しない三流役者アンソニーの理想は定職(歴史の大学教授)について安定した生活をする事。
そこでアンソニーは理想であるアダムという人格を複製するんですね。
色々あり最終的には愛人(浮気)とアンソニーの人格は事故ることによって複製されたはずのアダムという人格は主人格になる…と思ったら秘密クラブの鍵(浮気のきっかけ)で浮気心むくむく
母と生命の象徴である蜘蛛(女の束縛)という自意識が「コラ」って怒られて脳内妄想から覚めるオチだと解釈しました。
結局男って結婚しようが子供ができようが男の性から逃れることができないって事を示唆しています。

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